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電子レンジでレンガを作る part1


神殿の屋上では、砂場を作り続けてきた。もう1年ばかり経つだろう。この砂場の中には、魚や虫の死体、豚バラやお米などの食料、サランラップにまかれた大根、東京タワーのレゴ、焚火から生じた炭、鳩の糞など、神殿の思い出となるモノが、砂場に飲み込まれ、時に吐き出され、そしてまた食べられて、反芻を繰り返してきた。そんな砂場はある土となった。


その土とセメントと水を混ぜ合わせ、レンガを作ろうと思いついた。そのレンガで自分を守るための家でも作りたかった。そのレンガの型になるのは、電子レンジの中身がいいと思いついた。電子レンジとコンクリートとの組み合わせは、コンクリート内の水分を測定するときに電子レンジが使われることくらいであろうか。土とセメントと水がマイクロ波による波動の振動により、どんな効果が生まれるのか。今回は物質的想像力を駆使して、電気宗教学的に考えてみようと思った。


まず土とセメントを混ぜ合わせ、そこに少しずつ水を入れていく。シャベルでかき混ぜながら、その粘稠度を体感する。そこには、硬さと柔らかさのスペクトラムを感じることができる。パンやそば、うどん作りにも似たような感触があるのかもしれない。さらに、人と話しているときにも、相手の心の硬さや柔らかさがあって、その感触にも似ていた。それは人を信頼することに必要なひとつの指標になっているのかもしれないとも思った。硬すぎても柔らかすぎても、そこに関係を作りたいとは思えない。そんな想像を働かせながら、程よい粘稠度にしようと試みた。


ある程度水を入れたところで、それを何回も何回も捏ね合わせた。バシュラールは「捏粉について、土と水の2つの想像的元素の一種の協同作用、偶発事や矛盾に満ちたこの協同作用は、水が土をやわらげるか、土が水にねばりを与えるか、ということによってとらえることができる。・・・一方の元素がつねに能動的な主体となり、他の元素がその行動を受容するのである」と「大地と意志の夢想」で書かれていた。捏ねる作業は、同じことの繰り返しで、回転木馬や観覧車、性行為などをイメージしてしまうが、何よりもまずは反復作業の1回の重みの少なさを感じながら、無心にシャベルでかき混ぜた。すると、反復作業の影響は、私の手足を含めた全身の筋肉まで波及し、まるで土からシャベルを通して、身体に何者かがやってきて、踊っているような錯覚があった。


次にペースト状になった捏粉(土+セメント+水)を電子レンジの中に注ぎ込んだ。次回に続く。

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