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電子レンジでレンガを作る part2



part1からの続きである。かき混ぜてペースト状になった捏粉(土+セメント+水)を電子レンジの中身がいっぱいになるまで注ぎ込んだ。そして、電子レンジの扉を閉めて、まずは最小の200w、30秒間から温め、ワット数500w→700w、時間1分→5分→10分→15分と徐々に大きくしていった。「ちん!」という神聖な音を合図に中身を確認し、様子を適宜確認した。はじめは爆発することを恐れ、電子レンジから距離をとっていたが、爆発する可能性が少ないことが徐々にわかり、距離を縮めていった。「ぶーーーーーん」という暖めている音と、15分後の「ちん!」という音が繰り返され、この一連の流れは、滝や焚火の音と同じような作用であるように感じた。言葉を交わす必要がないノンバーバルな空間をつなぐ音の演出の実験のようだった。3-4時間ほど温めたところで、電子レンジの扉を閉めたまま、この捏粉が固まるのを翌日まで待った。


翌日、恐る恐る電子レンジの扉を開けてみると、そこには電子レンジにはまり込んだ岩倉様のおしりが見えた。まるで、穴に頭をつっこんだ人間もしくは神様が、頭が抜けず、おしりだけがでているような状態だった。「頭隠して尻隠さず」。電子レンジの入り口の幅より中身の幅のほうが広いことをすっかり忘れていた。つまり電子レンジからせっかく作ったレンガが取り出せなかったのだ。


「チーン!」という電子レンジの音を出していくうちに、お経を唱えたくなってきた。「あー、べー、てー、ぜー」と低い声を出しながら、ちょうど良さそうなところで「ちん!」と音を挟むと、まるで電気宗教的な儀式が出来上がった。電子レンジで作ったレンガ(電子レンギ)はこうして電気宗教的な「神棚」へと変異した。今後は電子レンジを一旦解体し、中身のレンガを取り出すことも視野に入れて前に進むこととなった。

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